2026年9月30日、AironWorks 東京本社にて「AironWorks Open Office Day #2」を開催しました。AI時代に成長する企業の共通点をテーマに、Salesforce Ventures、Wi […]
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2026年9月30日、AironWorks 東京本社にて「AironWorks Open Office Day #2」を開催しました。AI時代に成長する企業の共通点をテーマに、Salesforce Ventures、WiL、ALL STAR SAAS FUNDの投資家を迎え、急成長する企業の見極め方から、スタートアップで働くうえで大切にしたいこと、AironWorksの次の成長に向けた課題まで、率直な議論が交わされました。
顧客の反応が変わる瞬間をどう捉えるのか。創業者や一部の優秀な人材に依存した成長を、どう組織全体の力に変えるのか。投資家の視点から浮かび上がったのは、事業の可能性と、それを実現する人・組織を一緒に見ることの重要性でした。
オフィスに集まり、知見を交換する
AironWorks Open Office Dayは、AI、サイバーセキュリティ、イノベーション創出に関心を持つビジネスパーソンが集い、知識を交換しながら新しいつながりを生む交流の場です。
冒頭、AironWorks Co-founder and CEOの寺田 彼日は、AIやサイバーセキュリティを切り口に、直接会って議論する機会を増やしたいという開催の思いを紹介しました。
第2回となる今回は、さまざまな成長段階のスタートアップに向き合ってきた投資家3名が登壇。AironWorks 寺田がモデレーターを務めました。
浅田 賢氏|Salesforce Ventures Partner & Head of Japan
笹川 大和氏|WiL Principal
神前 達哉氏|ALL STAR SAAS FUND Partner
寺田 彼日|AironWorks Co-founder and CEO/モデレーター

AI時代のGrowth——「T2D3」の先へ
パネルに先立ち、寺田は「そもそもスタートアップのGrowthとは何か」を整理しました。起点となるのは、プロダクトが市場に受け入れられた後、事業をどの速度で伸ばせるかという問いです。
寺田「プロダクトが市場に受け入れられたタイミングから、1年ごとに3倍、3倍、2倍、2倍、2倍。ユニコーン企業になっていく会社の法則として、T2D3があります」
T2D3は、Tripleを2回、Doubleを3回続ける成長の目安です。講演資料では、ARR(年間経常収益)$2Mを起点に、5年間で$144Mへ拡大するモデルが示されました。毎年の成長が次の年の土台となり、5年で72倍になる計算です。

ここで寺田が指摘したのは、AI時代には、その成長の目安自体も変わり始めているということでした。
寺田「今、AI時代でこれが覆されてきている。我々も、こうした数字を追ってやっています」
では、AIは企業の成長をどう変えるのか。資料には、議論を深めるための二つの問いが置かれています。「T2D3より速く成長する会社が増えるのか」。それとも「同じT2D3を、圧倒的に少ない人と資本で実現する会社が増えるのか」。

売上の伸び率だけでなく、その成長を何人で、どれだけの資本で実現するか。成長の速度と、それを実現するための資源を合わせて見ることが、AI時代のGrowthを捉える視点になります。
世界の成長スピードは、どこまで加速するのか
T2D3が示す5年で72倍という成長。その目安を踏まえて講演資料を見ると、世界の先頭集団で起きている変化が浮かび上がります。
まず目を引くのは、世界の時価総額上位企業に占めるAI関連企業の存在感です。当日の資料では、世界のトップ10のうち9社が「AI・AI半導体関連」と分類されています。AIを生み出す企業だけでなく、それを動かす半導体や基盤を担う企業まで、幅広い領域に期待が集まっていることを示す構成です。

時価総額は、企業の収益力や将来への期待などを反映した市場の評価です。一方、事業そのものがどれほど速く拡大しているかを見るには、売上やARRの推移にも目を向ける必要があります。
その速度を示す例として、資料ではWizがARR $1Mから$100Mに達するまでの期間を18カ月と紹介。さらにOpenAI・Anthropicの成長を、既存の巨大テック企業と比較しています。そこから浮かぶのは、かつての急成長企業が築いた時間軸を、さらに圧縮して事業を拡大する企業の姿です。


世界の先頭集団では、「大きな企業になるまでに必要な時間」の常識が揺らいでいます。AIへの期待が企業価値に表れる一方、事業の現場でも短期間で大きな収益規模へ到達する例が生まれている。この二つを重ねると、急成長を実現する企業の共通点を、いま問う意義が見えてきます。
こうした環境で成長を続ける企業には、何が共通するのか。パネルでは、顧客の反応から営業組織の再現性まで、具体的な視点で議論が進みました。
成長の兆しは、顧客の熱量に表れる
最初の論点は、企業が急成長し始めるとき、どこに変化が表れるのかという問いでした。講演資料では、Customer(顧客)、Product(プロダクト)、GTM(顧客に届け、販売する仕組み)、Organization(組織)の4つの視点が示されました。
議論の中で紹介されたのは、顧客自身がプロダクトの価値を生き生きと語る場面です。提供する企業が機能を説明するだけでなく、使っている顧客が、自社にどのような成果や変化が生まれたかを周囲に伝える。その熱量や、口コミによって利用が広がる様子は、成長の兆しを捉える手がかりになります。
顧客の反応を見る際には、契約の有無に加えて、使い続けているか、実際に成果を感じているか、誰かに勧めたくなるほど価値を実感しているかにも目を向ける。こうした具体的な行動から、プロダクトが市場に受け入れられている度合いを考える議論となりました。
一方で、繰り返し言及されたのが市場の重要性です。どれだけ良いプロダクトやチームがあっても、需要の乏しい場所では成長が難しい。寺田も、市場の変化を成長の力に変える重要性を強調しました。
寺田「激流に逆らって泳ぐか、大きな波に乗るか。速さも、かかる労力も、まったく違います。大事なのは、大きな波が来る場所に身を置き、その波を乗りこなす準備をしておくこと。それが、爆発的な成長に欠かせない条件です」
顧客やプロダクト、組織の変化を見ると同時に、そもそもどの市場に向かっているのかを問うことが、成長を考える土台になります。
成長を続けるには、営業の「型」が必要になる
顧客から強い支持を得た企業が、そのまま成長し続けられるとは限りません。Salesforce Venturesの浅田氏が掘り下げたのは、創業者の営業力で立ち上がった事業が、組織で売れる事業へ移行する際の壁でした。
浅田氏「市場は大前提として重要です。人が通らない場所に店を開いても、商売は難しい。一方、いい市場に入れば成長を後押ししてもらえる。そのうえで、私たちが投資するシリーズA・Bあたりでは、その先に伸びる会社と、苦しむ会社が分かれてきます」
浅田氏は、創業者が売上をつくる段階から、優秀な営業人材を採用する段階、そして幅広い経験の人が成果を出せる組織へと、営業のあり方を変えていく必要があると説明しました。
浅田氏「よいプロダクトがあり、優秀な社長が自ら営業に取り組むことで、数億円規模のARRを築けることがあります。次に、社長一人では回らなくなって、優秀な営業人材を採る。ただ、そうした人をずっと採り続けられるわけではありません。経験の浅い人にも教えられる『型』をつくり、トレーニングを通じて組織で動けるようにしないと、その先で壁にぶつかります」
どの顧客に、何を、どう提案すれば価値が伝わるのか。その方法を共有し、ほかの人も実践できるようにすることが、浅田氏の言う再現性です。
浅田氏「天才が感覚でやっていることを、そのまま教えるのでは難しい。『この方法で取り組めば成果につながる』というメソッドが必要です。再現性を持って教えられることが、次の成長を支えます」
この指摘を受け、寺田はAironWorksの現在地を重ねました。
寺田「プロダクトができ、お客様の熱量も高まってきています。次は、再現性を持って採用し、組織をスケールさせられるか。成功を型にできるかが、今のポイントです」
顧客からの支持を、特定の個人に依存しない成長へ変えていく。採用と営業の仕組みづくりを一緒に進めることが、次の段階への課題として浮かび上がりました。


転職先を見るときは、「誰と、どの山を目指すか」
議論は、スタートアップへの転職を考える人の視点にも広がりました。
寺田「みなさんの親友に、『このスタートアップへの転職を考えているんだけど、どう思う?』と相談されたときに、どこを一番見るべきか」
親しい友人から転職の相談を受けたら、どこを確認するか。資料には、創業者・人、市場、顧客、成長という選択肢が並びました。
浅田氏「スタートアップには、創業者やCEOの色が強く出ます。その考えに共感できるか、この人と一緒にやりたいと思えるかが重要です。大企業と違ってCEOが簡単に変わるわけではない。人への共感がなければ、市場や顧客、成長が揃っていても、働くうえでは厳しいと思います」
事業の成長性に加え、働く時間を誰と過ごすか。議論では、尊敬できる人と刺激を受け合い、挑戦できること自体が、仕事の充実につながるという意見も出ました。
神前氏は、会社の目標を理解したうえで、自分がその組織にどう適応していくかを考えることが大切だと指摘しました。
神前氏「まず、その会社がどこを目指しているのかを、しっかり理解することです。中途入社であれば、前職との違いは必ずあります。そのなかで、これまでのやり方や成功体験をいかにアンラーニングし、新しい環境で力を発揮できるかが重要です」
神前氏「どのような会社の出身者で組織が構成されているかも、見ておくべきだと思います。日本であれば、例えばリクルートやキーエンスなど、独自の文化や仕事の進め方を持つ会社があります。そうした出身者が集まる組織にどのようなカラーがあり、自分と合うのかを確かめることも大切です」
神前氏「もう一つは、会社が『時間の密度』をどう考えているかです。同じ5年間でも、高尾山を目指すのか、富士山を目指すのか、エベレストを目指すのかによって、1日に求められる成果の基準は変わります。どの山を、どれくらいの時間で目指す会社なのかを理解する必要があります」
大きな目標に魅力を感じるだけでなく、その目標に向かう速度や、日々求められるアウトプットまで理解する。誰と働くか、どの山を目指すか、そして自分はその環境で何を学び直せるか。会社の目標と日々の働き方を結び付けて考えることが、自分に合う環境を見極める手がかりになります。

投資家が見る、AironWorksの可能性
後半では、投資家がAironWorksの何を評価し、どのような成長を期待しているのかが語られました。同じ会社を見ていても、投資する段階や重視する要素によって、その見立てには違いがあります。
浅田氏が挙げたのは、技術を担うチームの強さと、日本発で海外へ展開できる可能性です。一方、最初に話した時点では、事業の実績が投資判断に必要な水準に達していなかったことも振り返りました。
浅田氏「技術の強さがあり、日本発でグローバルに行けるポテンシャルを感じました。ただ、最初にお話ししたラウンドでは、事業の実績がまだ私たちの投資する段階ではなかった。そこで一度、次の機会にとお話しし、その後に投資させていただきました」
強い技術やチームへの評価と、投資するタイミングの判断は別のもの。その間も関係を保ちながら事業の進展を見ていた点に、寺田は感謝を述べました。
寺田「そのタイミングで投資しないときの対応に、違いが出ると思います。浅田さんは、否定するのではなく、もう少しタイミングを待って見ようと、その後もフォローしてくださいました」
続く笹川氏は、自らAironWorksに連絡し、カンファレンスで会ってから継続的に対話を重ねたと紹介。投資判断の軸を「市場・プロダクト・創業者」の三つに整理しました。
笹川氏「VCといっても、どのフェーズで投資するかによって、見る要素の重みは変わります。WiLは比較的成長が進んだ段階で投資することも多いので、特に市場を重視します。私たちの中では、『日本×サイバーセキュリティ×AI』は伸びる領域だという共通認識がありました」
その背景にあるのは、日本のサイバーセキュリティ市場の捉え方の変化です。笹川氏は、これまでは海外企業が日本に参入してシェアを広げる流れが強かった一方、安全保障への関心が高まる中で、日本企業だからこそ担える役割が見えてきたと説明しました。
笹川氏「サイバーセキュリティが、安全保障の領域にも広がってきています。これまで日本企業が市場を広げにくかった領域にも、日本企業だからこその成長の道筋がある。その市場の変化に加えて、AironWorksには技術力の高いグローバルなチームがある。日本から海外へという、私たちが応援したいテーマとも合っていました」
市場に追い風があることと、その機会をつかめるチームがいること。この二つが重なる点に、笹川氏は投資の理由を見いだしていました。浅田氏の技術・チームへの評価とも重なり、AironWorksの可能性は「日本で事業を伸ばす」ことの先にある海外展開まで見据えて語られました。
次の成長に必要なのは、価値を届ける力

期待を語るだけで終わらず、寺田は「今のAironWorksに足りないもの」を率直に尋ねました。採用は、その課題を埋めていくことでもある。何を強化すれば一段成長できるのか、投資家の視点から具体的な意見を求めました。
寺田「褒めていただくだけでなく、ここを良くすれば一気に伸びる、という部分を率直に伺いたいです。会社に足りない部分を埋めるのが採用でもあるので、どんな人が合うのかも含めて教えてください」
神前氏がまず挙げたのは、海外展開のスピードです。
神前氏「グローバルに、もっと早く行ってほしいと思っています。そのためにも、日本の事業基盤をさらに強くしたい。営業やマーケティングは、投資直後から比べてかなり伸びていますが、もう一段伸ばせると思っています」
神前氏が求めたのは、国内の商談機会を増やして事業基盤を強くすることと、海外でもマーケティング・営業を担える力を整えること。その両方を進める重要性を語りました。
神前氏「セキュリティのインシデントが起きることは、企業が対策の必要性を考えるタイミングでもあります。そこで、営業の伝え方をもっと磨ける。マーケティングも高めて、商談のパイプラインを増やしていくことが、日本の事業を安定させるうえで大切です。グローバルのマーケティングやセールスに取り組むことも重要だと思います」
続いて笹川氏は、PR・マーケティングに残る大きな可能性を挙げました。社会の関心が高まる市場にいるからこそ、自社の価値を誰に、どう届けるのかを、より明確にすべきだという提言です。
笹川氏「これだけサイバーセキュリティが注目され、日々ニュースになっている中で、もっとAironWorksらしいマーケティングができるはずです。自分たちの強みをしっかり理解し、届けるべきお客様を定義して、その相手にきちんと発信する。お客様に届ける力を、もっと高められると思っています」
笹川氏が求めたのは、単に露出や広告を増やすことではありません。強みを言葉にし、相手に応じて伝え方を変えることです。同じ技術やプロダクトでも、何を課題と感じる相手に、どの価値を示すかによって、受け止められ方は変わります。
笹川氏「自分がマーケターだったら、やりたいことだらけです。こんな表現も、あんな表現もできる。お客様だけでなく、政府などに対しても、さまざまな伝え方がある。これだけダイヤモンドのような商品はなかなかないので、見せ方次第で、もっと大きく化けると思っています。もっとできるのに、まだできていない。そこが課題です」
「課題がある」という評価は、成長余地への期待でもあります。神前氏は、営業とマーケティングを磨き、国内の事業基盤と海外への展開力を強くすることを求めました。笹川氏は、その前提となる強みの理解、顧客の定義、価値の伝え方に踏み込みました。
技術やプロダクトの強さを、顧客が理解し、選ぶ理由へと変える。二人の提言を重ねると、次の成長に必要なのは、すでにある価値を、必要とする相手へ届け切る力だと分かります。営業・マーケティングに加わる人にとっても、その成長を自らつくれる余地があるというメッセージでした。
成長を見極める視点を、次の挑戦へ
今回の議論では、急成長を続ける企業を見るための視点が、具体的な顧客の反応や組織の課題とともに語られました。顧客が価値を実感しているか。成果を出す方法を組織で共有できているか。一緒に働く人と、目指す方向や速度に共感できるか。
こうした問いは、経営や投資だけでなく、これからのキャリアを考える際にも役立ちます。AironWorks Open Office Dayは、立場の異なる人が知見を交換し、それぞれの次の挑戦を考える場となりました。